ソリューション

ミラープラントとは

運転訓練シミュレータでは、現実のプラント、あるいはこれから建設されるプラントをダイナミックシミュレータで模擬したものをコンピュータ上に再現し、この仮想プラントを相手に運転訓練が行われます。 その意味ではプラントの写像を作ることになります。 ミラープラントは、この写像となる仮想プラントをオフラインからオンラインに移して活用しようというもので、これによってプラントの安定運転、安全操業を目指すとともに、新たな指標による最適な運転を可能にしようとしています。 従来、定常状態シミュレータをオンラインに応用することは行われていましたが、ダイナミックシミュレータをオンライン応用することは世界的に見てもあまり例がありません。



ミラープラントの仕組み

高精度、高パフォーマンス、コンパクト、定常計算とダイナミック計算の両モードをもつというプラントシミュレータVisual Modelerの優れた特長をフル活用して実現します。


ミラープラントの応用

ミラープラントの仕組みを使って、プラント内部の可視化、将来予測、最適運転の探索、予防診断などさまざまは応用が可能です。


ミラープラントを使った運転革新

この技術を使うと運転が大きく変わります。ミラープラントは安定・安全な運転の実現と同時に、運転の質を高めることができます。


ミラープラントの仕組み

ミラープラントは3つの異なった働きをするシミュレーションモデルで構成されます。 すなわち、実プラントの状態を常に追いかけてその挙動を再現するミラーモデル、データリコンシリエーションを行ってパラメータを調整する同定モデル、得られたプラントの状態を使って予測計算や解析計算を行う解析モデルです。
この3種類のシミュレーションモデルはプラントシミュレータ Visual Modeler で構築しています。 元にするモデルは1つであり、中規模プラントであれば、すべてのモデルを1台のパソコンの中で実行できます。
この Visual Modeler をコアにして、OmegaLand の各モジュールを使ってミラープラントのシステムに組み上げます。

ミラーモデル(ダイナミックモデル)

現実のプラントと全く同じ動きになるように調整しながらダイナミックシミュレーションを行うモデルが使われます。 実際のプラントに追従しながらその動きをコンピュータ上に再現します。 DCS(分散制御システム)にオンライン接続して、主要な運転操作量や測定値を1秒周期で取り込みモデルに与えます。 運転操作量はモデルに組み込まれている制御機器に与え、いくつかの主要な状態量は測定値に追従させます。 このようにモデルを実プラントに追従して動かすことをトラッキングと呼びます。

同定モデル(定常状態モデル)

ミラーモデルをリアルタイムで長時間実行していると実プラントとの間にずれが生じます。 触媒活性や伝熱係数などの性能パラメータは長いスパンで経時変化すると考えられます。 また、計器の測定値に誤差が生じてきます。 これらの誤差が最小となるように定常状態モデルを使ってデータリコンシリエーションを行い調節します。 ただし、動的な補償を行っているところが特長で、ある程度非定常であっても、物質や熱のアンバランスを補償しています。 これは独自開発したもので、動的補償付きデータリコンシリエーションと呼んでいます。 求まった性能パラメータはミラーモデルに反映されます。

解析モデル(ダイナミックモデル、および定常状態モデル)

現状のプラント状態をミラーモデルから取り込み、ダイナミック計算や定常状態計算を行うことで様々な応用が可能です。 たとえば、現状からダイナミックシミュレーションを行えば、この先のプラントの動きを予測すること(これを過渡状態予測と呼びます)が可能となります。 ある操作をする前に仮にその操作を行ったとしてダイナミックシミュレーションを行えば、その影響を事前に知ることができます。 現状の状態を出発値にして、あるスペック条件で定常状態シミュレーションを行えば、そのプラント状態を求めること(これを定常状態予測と呼びます)ができます。

これらのモデルは1つ、あるいは複数のパソコン上で同時に動かします。 ミラーモデルはプラントに追従させるために常時動かしておきます。 常にプラントの動きを予測するために、過渡状態予測を行う解析モデルを数十倍速で動かしておきます。 さらに、同定モデルを長い定周期ごとに動かしたり、解析モデルで定常状態計算を行ったりと、3つ以上のプラントモデルが同時に動くことになります。 また、ダイナミックモデルと定常状態モデルには同一のプラントモデルが使われています。 これは、シームレスにダイナミック計算と定常計算を行き来できるVisual Modelerの特長を利用しています。 ミラーモデルの計算結果を使って解析モデルで定常状態予測を行ったり、同定モデルで推定した性能パラメータや内部状態をミラーモデルに戻したりすることが容易にできます。 そして、計算結果はもう1台のパソコンに送り、グラフィック表示してオペレータに情報を提供します。


ミラープラントの応用

ミラープラントの仕組みを使っていろいろな応用が可能です。

プラント内部の可視化

ミラーモデルは実プラントの写像です。当然ながらモデル内の状態量はすべて計算しているため、装置や配管の中の流量、温度、圧力、組成を知ることができます。実プラントで測定されている箇所はわずかなので、プラントの中が手に取るように見えます。したがって、測定していないところで警報を設けることも可能となります。

過渡状態予測

これは将来予測の機能であり、今後のプラントの動きを事前に予測するものです。使い方のひとつは、1時間程度先までの予測計算を常時繰り返して動かしておき、運転の指針にしたり、事前の警報で早めのアクションを取ったりします。もうひとつは、操作をする前に事前に予測のケースステディを行って適切な運転を検討することができます。

定常状態予測

事前に運転状態の検討を、定常状態のバランスで行います。たとえば、生産量をこれくらいにするためにはフィード量がどのくらい必要で、そのときの反応条件はどうしたらよいかなどを検討できます。

最適運転の探索

最適化は運転の究極の目的と言えるでしょう。 定常状態での使用エネルギー最小化などの最適化と、銘柄切り替えを最短時間で行うなどの動的な最適化が考えられます。 当面は定常状態予測や過渡状態予測のケースステディを行って、より適している運転条件や運転方法を見つけることになりますが、モデルの精度が高い分だけより厳密な最適化が達成できます。

予防診断(異常診断)

実プラントの測定値とミラープラントの計算値が乖離した場合は、プラントに異常が発生したことを示しています。 いち早く計器故障やプラント異常を発見できます。

制御性改善

PIDパラメータを調節して制御性を改善する場合に、DCSに反映する前にプラントモデルを使って事前に検討できます。

運転訓練

現在の状態を使って訓練や教育を行ったり、あるいは変調やトラブルを起こしたときの状態を保存しておいて、その状態から訓練を行ったりできます。

このように、ミラープラントはさまざまな機能を実現できますが、反面焦点が絞りにくく何に役に立つか、とらえにくいかもしれません。 そこで使う側の立場で整理してみましょう。

(1) 情報提供

オペレータへの運転情報の提供です。 DCSでは得られないような状態量や、消費エネルギー量や品質などの変換量をリアルタイムに知ることができます。 この点ではソフトセンサーに近いですが、物理モデルを使っている分、外挿性や精度では優位です。 また、プラント全体など広範囲を対象にできます。 つぎの情報としては、現状に対する最適な運転条件をケーススタディして提示してくれることです。 そして、もうひとつは将来を予測して表示してくれることで、プラントの動きを事前に知ることができます。 これらは運転の指標として有益な情報源となり得ます。

(2) 警報発報(アラーム)

これも情報の1つではありますが、オペレータへの警告になります。 アラームには2種類あり、DCSに表示されていない状態量と将来予測による状態量に対するアラームです。 特に後者は早めに変調を察知できるため、プラントの安定化につながります。 アラーム発生時には目標値を指定すると、必要な操作量とそこに至る過渡状態を提示してくれます。 また、機器・計器の故障や誤指示を検知して直接ガイドしてくれる予防診断機能は、機器・計器のメインテナンスに有効です。

(3) 運転検討

いろいろなケースステディ機能を使って運転を検討します。 これはスタッフにとって運転設計が行える強力なツールとなります。 ロード変更時など現在値に対して設定変更後の定常状態を求める定常運転のケーススタディと、操作量に対するプラントの応答を調べる過渡運転のケーススタディがあります。


ミラープラントを使った運転革新

国内のベテランオペレータは、経験が豊富でプラントの隅々まで熟知していますが、物理的な裏付けで説明できる方は多くないと思います。 一方、スタッフは、P&IDが現実と合っていないなどドキュメントがそろっていなかったり、建設時からの改造の履歴が不明であったり、日常の雑事に忙殺されていたりと、本来のプラント運転を設計する業務になかなか手が回っていないのが現実ではないかと思います。
ミラープラントのシステムを構築することは、その過程でプラントの細部の理解と詳細なモデル化が求められます。 運転訓練シミュレータの構築に比べて、スタッフとオペレータの協業は必要不可欠です。 この構築作業をスタッフが主体となって関われば、人材育成に大いに役立ちます。 オンライン運用してのチューニングの過程では、オペレータに関わってもらう必要もあります。 実プラントで運用が始まれば、モデルを通じたスタッフとオペレータとの共通の議論の場が提供できることになります。

この先が見える、プラントの内部が見えるということは、オペレータの精神的な負荷の軽減につながります。 事前に警報がなれば余裕を持って対処ができます。 測定していないところで異常が見つかれば、変調や危険の回避に早く手が打てます。 見えることと早めの対処で今までにないレベルの安定・安全運転が可能になると考えられます。 また、現状は様子をみながらこまめな操作で調整が行われるが、予測ができることでより目標をもった操作ができるようになります。

生産量、品質、エネルギー使用量などを運転指標にできる可能性も出てきます。 今までは運転してみた結果として生産量や品質が決まっていましたが、事前に予測計算を行うことで目標とする運転状態を求めることができる、あるいは計画生産ができることになります。
このようにミラープラントは運転の高度化をねらっています。 オペレータは組成やエネルギーを意識した運転を行い、スタッフは市場要求に応じて事前に計画して運転を行うという、まったく運転の概念を変えることができる新技術です。